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【排気量アップで強烈なパワー】ハーレーのボアアップとストローカーの違い

ハーレー 排気量アップ
  • 排気量アップの方法を知りたい
  • ボアアップとストロークアップによって、エンジン特性がどう変わるか知りたい

こういった疑問にお答えします。

エンジンチューニングの基本と言えば、吸排気のエアクリーナー・マフラーの交換に、インジェクションチューニングです。

これだけでも、エンジンが持っているエネルギーを開放できるので、パフォーマンスはあがります。

しかし、さらにモアパワーやテイストを求めたくなる場合に、排気量アップが選択肢にあがります。

エンジンパワーは、吸気できる混合気の量(排気量)で決まります。

混合気の量を大幅に増やし、エンジン内部のフリクションを下げれば、まったく異なるエンジンと言っていいほど、パワーが上がります。

そのため、排気量アップ(ボアアップ・ストロークアップ)は、パワーを上げる方法で、もっともシンプルな考えのチューニングと言えます。

しかし、ツインカムの最後のTC103(1689cc)でも、吸気効率をアップさせ、徹底的に低フリクション化すれば、過給器なしでも後軸120馬力にトルク16kgは狙えます。

ですので、吸気効率や低フリクションでは到達できないパワーや、テイストが欲しい場合に、排気量と吸気効率を上げれば最大の効果が発揮されます。

それでは、イラストや写真などを使い排気量アップについて説明したいと思います。

ツインカムエンジンはハーレー史上最高のエンジンである

排気量とは混合気をシリンダー内に吸気できる量

ハーレー 排気量アップ

エンジンの排気量は、シリンダー内のピストンのストローク量で決まります。

エンジンの排気量
  • ボア:シリンダーの内径
  • ストローク:ピストンの移動量

総排気量はボア×ストローク×気筒数で決まる

排気量アップには、3パターンあります。

  1. 「ボアアップ」:シリンダーのボア(内径)を広げる
  2. 「ストロークアップ」:ピストンのストローク量(移動量)を増やす
  3. 「ボア/ストローク」ともにアップ

どの方法でも、シリンダー内の混合気が入る量が増えるので、排気量アップになります。

しかし、実際にはシリンダー内に入るまで、多くの吸気抵抗があり排気量分の混合気が入ってくるわけではありません。

そのため、排気量アップと同時に吸気効率をあげるチューニングが必要になります。

ノーマルのシリンダーヘッドは吸気効率が悪く、以下の3点の高効率化で、エンジンパワーを上げることができます。

エンジンの心臓部はシリンダーヘッド
  1. 「燃焼室の形状を最適化」し燃焼効率をあげる
  2. 混合気の流速を高める「バルブシートカット」を施す
  3. 「ポート研磨」で、突起物をなくし吸気通路を見直し、混合気をスムーズに取り入れる

上記3点で、混合気が燃焼室へ、すばやく多く取り入れることができ、短時間で効率の高い燃焼が可能になります。

どのようなチューニングでも、すべてのエンジンパワーはこのシリンダーヘッドから始まります。

シリンダーヘッドの吸気効率については、詳細な記事がありますので、こちらの、シリンダーヘッドの高効率化でボアアップせずにトルク・馬力があがる!を読んでみてください。

ボアアップとストロークアップではエンジン特性がことなる

おなじ排気量でも、ボアとストロークの比率でエンジン特性が変わります。

  • ショートストロークエンジン:高回転・高出力を発生させられる
  • ロングストロークエンジン:低回転・低速トルクを発生させられる

ボアストローク比については、詳細な記事がありますので、こちらの、【ロングストロークのハーレー】ボアストローク比でみるエンジン特性を読んでみてください。

ハーレーの883はロングストロークエンジン
【ロングストロークのハーレー】ボアストローク比でみるエンジン特性 ハーレーはロングストロークって聞いているけど、ボアアップしたらショートストロークの特性に近づく? 883がハーレーの中...

ハーレーのエンジンは、最新のミルウォーキーエイトまで全て、低回転で低速トルクを発生させるロングストロークエンジンです。

なぜ、ハーレーがロングストロークエンジンを採用しているかは、重い荷物を載せタンデムで長距離を走るために適しているためです。

力強い低速トルクがあれば、長い上り坂を低い回転数でゆうゆうと登れるので、長距離ツーリングに向いています。

ショートストロークの馬力型エンジンでは、重い荷物を積んで坂を登るには、回転数が必要で、疲れやすく燃費の面でもツーリング向きではありません。

しかし、ハーレーのV型2気筒の大排気量エンジンでは、高回転まで豪快な加速を味わえます。

そのため、ボアアップとストロークアップ、どちらの排気量アップ法を取り入れるかで、同じ排気量でもパワーの出方で使いかたや、楽しみかたが変わります。




「ボアアップ」はシリンダーとピストンの径を大きくする

ハーレー ボアアップ ショートストローク

ボアアップはボアを広げるだけなので、基本的にはピストンとシリンダーのチューニングのみです。

ストローク量は変わらないので、回転数は同じで全域でパワーを上げられるので、メジャーな排気量アップ方法です。

ボアアップのメリットは作業がシンプルで全域でパワーがあがる

ハーレー ローコンプ

ボアアップ用のピストンに、ピストン径に合わせたシリンダー交換または、内径をボーリングすれば完成で、作業は基本的には腰上だけですみます。

使用回転数は変わらずにパワーを上げられるので、すべての回転域でパワーが上がり、今までと同じフィーリングでレブまで力強く加速を続けます。

ボアアップはコンロッド長を変えずにできるため、シリンダーにかかるサイドフォースで起こるピストンのスカッフィングや、ピストンスピード上昇によるオイル切れなどのリスクが増えることもありません。

ボアアップのデメリットは発熱量が増えるケースがある

ハーレー クランクケース シリンダーベース

ピストンサイズは、クランクケースに入るサイズが最大になります。

ハーレーはV型45度の2気筒エンジンで、2つのシリンダーが1つのクランクを共有している同軸クランクを採用しているために、コンロッドが短めに設定されています。

そのため、ボアを広げすぎると、ピストンが下がりきったときに2つのピストンが重なりあうことが起きてしまうので、ピストンの最大サイズはおのずと決まり、最大排気量も決まります。

シリンダーをボーリングして広げる場合は、スリーブに厚みを残しておく必要があります。

ハーレー ボアアップ スリーブ

画像元:https://shop.thunderbike.de

スリーブが薄いと発熱量が増え、ノッキングが起こりやすくなるため、ピストン、またシリンダーヘッドで圧縮比を下げる必要があります。

また、ピストン重量が大幅に変わる場合は、フライホイールのバランス取りが必要になります。




「ストロークアップ」はシリンダーを伸ばしピストンの移動量を増やす

ハーレー 排気量アップ ストローカー
画像元:https://www.sscycle.com/

ストロークアップはボアアップとは異なり、ピストンの移動する距離が増えるので、よりハーレーらしい粘りのある低速トルクを得ることができます。

エンジンのパーツをほぼ全てチューニングするので、作業はボアアップよりも多く高額になりますが、ストロークアップは、フィーリングを含めエンジン特性が大きく変わります。

ストロークアップのメリットは低速トルクが強くなりハーレーらしくなる

ヘビーウエイトリング フライホイール

ピストンの移動量、押し下げる時間が増えるため、重いフライホイールでも回せるためよりアイドリングからハーレーらしいエンジンに変わります。

ヘビーウエイトフライホイール化すると、鼓動感が強く、低中回転のトルクは強烈に強くなります。

ヘビーウエイトフライホイールについては、詳細はこちらの、フライホイールで史上最高の鼓動感と低速トルクを手に入れる!を読んでみてください。

腰下のクランクケースのパーツをチューニングするので、低フリクションで粘りのある低速トルクで、ノーマルとは比較にならないほど、魅力的なエンジンに生まれ変わります。

ストロークアップのデメリットはピストンスピードがあがる

ストロークアップはピストンの移動量が増えるので、ピストンスピードがあがります。

そのために使用回転数を上げることができません。

ピストンスピードが速くなると、摩擦による抵抗や熱が増え、ロスが多くなります。

その結果、ピストンのスカッフィングやオイル切れなどのリスクがあがり、耐久性にも問題が出てきます。

低中回転は極めてトルクフルになりますが、それ以上の回転となると上昇が鈍くなりやすい。

そのため、カスタムショップには、徹底的に低フリクションにできるスキルと、ノウハウが要求されます。

そうでないと、ロングストロークエンジンの良さを活かすのは困難です。

ストロークアップで重要な連桿比(れんかんひ)

エンジンの回転数を6,000回転まであげると、20m/s以上のピストンスピードになります。

この数値は鍛造ピストンでも空冷エンジンでは限界に近い。

ストロークアップで高い回転数で高出力化にする場合は、適切な連桿比(れんかんひ)でないと、シリンダーにかかるピストンからのサイドフォースが大きくなり、ピストンのスカッフィングやベアリングの破損、オイル切れが起こりやすくなります。

ハーレー ボアアップ 連桿比

ロングストローク特有のリスクを無くすには、適切なコンロッド長でサイドフォースを弱める必要があります。

適正なコンロッド長であれば、使用回転数をさげる必要はなく、ストローカーのデメリットはなくなります。

ハーレー ストローカー コンロッド

画像元:http://www.sundance.co.jp

連桿比・コンロッド長の算出
  • コンロッド長=(ストローク量/2)×連桿比
  • 連桿比=コンロッド長/(ストローク量/2)

※コンロッド長は軸間距離

連桿比は一般的なエンジンでは3.5付近に設定され、平均回転数の高いスポーツエンジンは4付近に引き上げられます。

NAのF1では、5以上に設定されていました。

EVOまでのビッグツインやTC96などは、連桿比3.5で高回転には向いておらず、ストローカーで低回転から高回転までパワーが必要な場合は、エンジン高に余裕があれば、コンロッドを伸ばし、連桿比を5付近に設定したほうが、よりストローカーの性能と味わいに耐久性を上げられます。




排気量アップは多くの注意点があり、車両全体の見直しも必要

ハーレー ブランチヘッド ローコンプ

高くなった圧縮比をさげる

燃焼室の容積が変わらないため、圧縮比が高くなります。

ノーマルの圧縮比でも、日本のオクタン価では高くノッキングが起きています。

空冷エンジンはノッキング(プレイグニッション)を起こしやすいため、圧縮比を落とすローコンプ加工が、ノーマルでも耐久性や性能をあげるためには必要です。

ピストンが上がっている最中に、点火プラグ以外の熱で燃焼を開始してしまうと、エンジンに深刻なダメージが残ります。

高くなった圧縮比を下げるため、ローコンプピストンや、シリンダーヘッドの燃焼室の容積を増やし適正な圧縮比にします。

適正な圧縮比は、圧縮抵抗に負けない強い燃焼圧力が発生し、エンストさせようにもならないほど、粘りのある強い低速トルクが発生し、ノッキングリスクも減ります。

ストローカーで起こる、アイドリングの不安定さもなくなります。

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増えた混合気をタイミングよくキレイに燃焼させる

排気量アップで大幅に増えた混合気を、効率よく燃焼させるには、空燃比に点火時期をあわせる必要があります。

薄い空燃比に点火時期が見誤ると、エンジンに大きなダメージが残るので、必ずプロチューナーによるチューニングが必要になります。

知識とノウハウはもちろん、設備の整った環境が求められ、納車後のサポートも重要な要素になります。

インジェクションチューニングについては、詳細な記事がありますので、こちらの、【最新】インジェクションチューニングで馬力も味わいも開放させる!を読んでみてください。

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大幅にパワーアップしたら車両全体の見直しも必要

排気量アップはシリンダーやピストンなどのパーツを変えて終わりではなく、エンジンが持つエネルギーが根本的にあがるので、車両全体に影響を及ぼします。

常にエンジンパワーより、足回りが上回っていることがバイクの絶対条件なので、足回り(サスペンション・ブレーキなど)のアップグレードは必須です。

排気量アップしても、パワーが上がっていないケースがよく見られます。

そういったケースの要因は、スロットルボディの口径やマニホールドや、ポートのデザイン、インテーク・エキゾーストバルブのサイズ、カムプロフィールやエキパイの排気効率に、2次ドライブが大きく悪影響しています。

一番の原因は「ただパーツを組み上げただけ」の作業だからです。チューニングとはほど遠いカスタム車両があります。

深い知識に経験と実績、ノウハウのあるプロに、車両全体を含めてチューニングすることをおすすめします。

まとめ

ここまで、排気量アップについて解説いたしました。

以下に、重要なポイントをまとめています。

  • 排気量アップには「ボアアップ」「ストロークアップ」に「ボア・ストロークアップ」がある
  • 同じ排気量でもボアアップとストロークアップでは、エンジン特性がことなる
  • ボアアップは全域でパワーがあがる
  • ストローカーは強烈な低速トルクが発生する
  • ストローカーを活かすには全てのパーツに精通する高いスキルが求められる
  • 排気量アップはまったく異なるエンジンに変わる
  • 足回りのアップグレードは必ず必要

また、記事の後半で説明した「納車後のサポート」や「深い知識に経験と実績、ノウハウを持っているプロにオーダーする」も極めて重要な要素になります。

 

今日も、最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

 

ARIGATO BIKE

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