ハーレーの最大の魅力はエンジンです。
しかし、実際に乗ると排気量のわりに、トルクがないと感じる方は多いと思います。
主な理由は2点あります。
- ノーマルのシリンダーヘッドは吸気効率が悪く、排気量分の混合気が入ってこれない
- 厳しい排ガス規制をクリアするために、希薄燃焼(ガソリンの割合が少ない)のインジェクションセッティングになっている
この2点によって大幅に出力が低下しています。
この2点を解決すると、飛躍的にトルクと馬力が向上し、ハーレーらしい味わいも深くなります。
そのため、インジェクションチューニングで排気量に見合ったガソリンを供給することで、ロングストロークエンジンらしい力強さを取り戻せます。
このインジェクションチューニングについての詳細は、こちらの、【最新】インジェクションチューニングで馬力も味わいも開放させる!に書きましたので読んでみてください。
ノーマルのシリンダーヘッドは吸気効率が悪く、以下の3点の高効率化で、排気量アップと同等以上のトルク・馬力を上げることができます。
- 燃焼室
- バルブシート
- ポートの加工(形状含む)
シリンダーヘッドの高効率化の方法や、どのような効果があるのか、画像やイラストを添えて解説していきたいと思います。
ハーレーのノーマルシリンダーヘッドの特徴
エンジン性能や特性は、吸気できる混合気の量できまります。
つまり味わいも含めたエンジン性能は、シリンダーヘッドの吸気効率で決定されます。
- 吸い込みにくいポート形状
- 吸い込みにくいバルブシート
- 燃焼しにくい燃焼室
- オクタン価に合っていない圧縮比
この状態で混合気を燃焼させても、強い燃焼圧力を生みだせずに、低回転では圧縮抵抗に負けてしまい粘りのある低速トルクが発生しません。
トルクが発生しなければ、回転数による馬力も発生しません。
この魅力あるエンジンのエネルギーは、シリンダーヘッドの燃焼室から生まれ、その燃焼エネルギーが全てのエネルギーに波及していきます。
シリンダーヘッドの高効率化
シリンダーヘッドの役割は、
- 燃焼室にスムーズに多くの混合気を吸気させる
- 燃焼室で効率よく燃焼させる
- 排気ガスを効率よく排出させる
シリンダーヘッドは、エンジンチューニングのメインで、このエリアに世界的なメーカーが莫大な開発費用をかけて研究開発をしています。
このエリアを無視したチューニングは、エンジンチューニングとはいいません。
全てのエンジンのエネルギーは、この100cc程度の燃焼室から始まります。
1. 燃焼室の形状を最適化し損失をへらす
ノーマルのエアクリーナーとハイフローエアクリーナーで、シリンダー内に入る空気の量が異なるように、ノーマルのヘッドは排気量通りの空気が入ってくるわけではありません。
下記のハイフローエアクリーナーは178CFMの高い吸気を誇る。
混合気が入ってこれなければ、適切な圧縮比にもなりません。
燃焼室の形状を最適化し吸気量を増やします。
燃焼室を最適化するには、まず、ノッキングが発生しやすいインテークポートの奥側から始めます。
インテークポート側はノッキングが起こりやすいので埋めますが、そのままだと圧縮比が高くなってしまうので、スワールを利用して充填効率が上がるように、混合気が燃焼室を回り込むような形状に削ります。
測定と削るを繰り返していきます。
スワールとは、シリンダー内に混合気をらせん状に充填させる方法で、サイドドラフトの2バルブロングストロークエンジンに最適な吸気方法です。
V-RODとミルウォーキーエイト、スポーツスターSが採用した4バルブでは、縦うずを発生させる上から吸気するダウンドラフトのタンブルが最適な方法で、そのダウンドラフトを採用したのがV-ROD、スポーツスターSでした。
この作業でエンジンの充填効率が向上し、ノッキングを防ぎながら排気量以上の吸気量を得ることができます。
ノウハウを持っているエンジニアでも、多くのテストを繰り返さないと理想の燃焼室にはたどり着けません。
この非常に地道で時間のかかる作業から、導き出された燃焼室は全てにおいてノーマルを上回る
- 吸気量の増加からうまれる高い出力
- 高い燃焼効率で、ガソリンから引き出せる最大の燃焼圧力
- 適切な圧縮比による、ノッキング・オーバーヒート防止
- 高い排気効率がうむ、高い吸気効率
この燃焼室の形状は、ブランチヘッドやS&S、JIMSなどのメーカーごとに異なり、環境やガソリンによっても燃焼室は変わります。
日本のガソリンに合わせた燃焼室は、サンダンスのブランチヘッドです。
画像元:S&S
画像元:サンダンス ブランチヘッド
この燃焼室はまだ改良の余地があり、点火プラグから遠い箇所の燃焼効率の追求はまだ終わってはいません。
水冷エンジンよりシビアなノッキングもあります。
空冷エンジンでは走行風でしか冷やせないため、ノッキングを制御することが極めて困難です。
しかも日本のハイオクは数値上は問題ないですが、実際にはノッキングが起きています。
日本の交通事情や、オクタン価に合わせた圧縮比にするのが、ノッキング防止には有効です。
詳しくはこちら、シリンダーヘッドのローコンプ化でパフォーマンスも耐久性も向上する!に書いたので、読んでみてください。
2. ビッグバルブ化の効果はバルブシート次第
吸排気効率を上げるために、インテークバルブ・エキゾーストバルブ径を大きくします。
このことにより、多くの混合気が排気され吸気されます。
しかし、インテークバルブ径を大きくすると混合気の流速が落ちるので、バルブシートカットで流速を速めるカットをほどこします。
このバルブ周りのチューニングだけで10%以上は出力アップにつながります。
シートカットの作業自体は難しくありませんが、長い蓄積で得たノウハウが求められる作業です。
バルブ形状は、エキゾーストバルブよりもインテークバルブはシビアです。
負圧の影響を最小限にするために、細いステムに限りなく吸気抵抗が少ない形状が求められます。
さらにビッグバルブ化の効果を最大限にするのが、バルブの開閉タイミングをコントロールするハイカムです。
直接吸気をコントロールすることは難しいので、吸排気バルブが同時に開くオーバーラップを利用して、効率の高い排気から吸気へつなげます。
ハイカムについては、詳細な記事がありますので、こちらの、性能と味わいに直結するハイカム!カムプロフィールと選び方を読んでみてください。
3. ポート加工で空気の損失をへらす
損失の少ない通路でなければなりません。
運動量をもった空気が、燃焼室に吸気されるまでに突起物や、形状などにより、渦を巻いてしまったらシリンダー内に入ってこれません。
吸気通路をスムーズにし、渦により損失が増えないようにしなければなりません。
ポート加工と吸気通路は、燃焼室とバルブ周辺の高効率化が成功した上で、5%前後の出力のメリットがあります。
出力においてもメリットは大きいですが、スロットルレスポンスの向上にも効果的です。
アクセルの低開度でも、ポート内の流速を上げることができるため、ハーレーの強力な低速トルクが扱いやすくなります。
しかし、燃焼室とバルブの高効率化に成功していなければ、ポート加工の効果はほとんど期待でません。
インジェクターによっては壁面にあたった際に液体に戻ることがありますので、インジェクターの選定や、角度の検証も必要です。
まとめ
燃焼効率を追求したシリンダーヘッドは、どんなカスタムよりもハーレーらしいドコッドコッとした粘りのある低速トルクに、鼓動感といわれる心地よい振動を感じられます。
しかも、上まで迫力ある豪快な加速が続きます。
燃焼室とバルブ、ポート加工(吸気通路)の高効率化によって相乗効果が発揮され、どれかひとつかけてしまうと効果が激減してしまいます。
このように吸気量を最大化したシリンダーヘッドは、TC96でも後軸で100psを超えてきます。
エンジンは損失が少ないほど、一発一発の燃焼が強くなりハーレーらしさを感じることができます。
今日も、最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
ARIGATO BIKE
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