- エンジンの圧縮比を下げる「ローコンプ化のメリット」を知りたい
- 圧縮比を上げる「ハイコンプ化のデメリット」を知りたい
こういった疑問にお答えします。
エンジンは圧縮比を高めたほうが、高回転時の燃焼圧力が強くなるために、エンジンの出力は向上します。
高性能なリッターSSなどの圧縮比は、ハーレーよりもはるかに高い13:1です。
しかし、ハーレーの圧縮比はXLなら10以下、ビッグツインなら9~7.8に下げたほうが良いと言われています。
その理由は、近年変化したガソリンの成分と低くなったオクタン価、日本の交通事情があげられます。
エンジン温度を一定に保てない空冷エンジンでは、高い圧縮比は「プレ・イグニッションの発生」と「低回転時の圧縮抵抗によるトルク低下」をまねく恐れがあります。
そのため、圧縮比を下げるメリットは「ノッキングを防ぐ」、「低速トルクの増加」の2点のパフォーマンスと耐久性の向上になります。
それでは、ローコンプ化のメリットや、ハイコンプのデメリットを詳細に解説していきたいと思います。
エンジンの心臓部はシリンダーヘッド
エンジンのエネルギーは、この100ccに満たないシリンダーヘッドの燃焼室から始まります。
この燃焼エネルギーを引き出すには、適切な圧縮比に、効率の高い燃焼室にする必要があります。
ハーレーは巨大な空冷エンジンです。これほど大きな空冷エンジンのバイクは世界を見渡してもほぼありません。
1気筒最大で1,000ccに迫る排気量の空冷エンジンです。
この巨大なエンジンの熱は走行風でしか冷やせないため、熱を一定に保てる水冷エンジンと圧縮比を同列に扱うことはできず、空冷エンジン特有の扱い方が必須になります。
1気筒最大排気量、250cc程度(4気筒リッターバイク)の水冷エンジンと同じように扱うと、走行風が受けられず高い負荷状態になった空冷エンジンは、圧縮中の熱で燃焼を開始するプレ・イグニッションを簡単に起こしエンジンにダメージを残します。
- 水冷エンジンと空冷エンジンの圧縮比は、同列に扱うことはできない
- 高い圧縮比は、低い回転数で圧縮抵抗に負けてエンストや低速トルクの低下につながりやすい
- 高い圧縮比は、圧縮中の熱で燃焼を開始してしまうプレ・イグニッションを発生させ、エンジンに深刻なダメージを残す
適切な圧縮比は、圧縮抵抗に負けない強い燃焼圧力が発生し、エンストさせようにもならないほど、粘りのある強い低速トルクが発生します。
低いオクタン価でハイコンプにする危険性
高いオクタン価のガソリンが手に入るなら、ハイコンプでパワーを上げます。
しかし、日本では残念ながら手に入りません。
オクタン価とガソリン成分にあった燃焼室にする為には、燃焼室を広げてローコンプにする必要があります。
オクタン価とガソリン成分にあった燃焼室にすれば、エネルギーに見合った燃焼圧力がうまれ、粘りのある強い低速トルクが発生し、ノッキングリスクが低下し、耐久性もパフォーマンスもあがります。
日本のハイオクガソリン、オクタン価96以上は、数値上はハーレーで使用しても問題は一切ありません。しかし、近年のガソリン成分変化と日本の交通事情では、現状のオクタン価は適切ではないと考えられます。ノーマルでもノッキングが発生し低速トルクも出ていません。
※2020年6月27日の毎日新聞の発表で、100と表示されてあったオクタン価がレギュラーと混ぜて販売され100オクタン価より低く販売され、虚偽であったと明確になりました。日本のハーレーがノッキング(プレ・イグニッション)で壊れる理由がこれでハッキリしました。日本の低いオクタン価にあった圧縮比にしないとエンジンに致命的なダメージが残る可能性があります。
同じトルクなら、ハイコンプ(高圧縮)は高回転でのレスポンスが良く、するどい加速が可能です。
反面、低回転では圧縮抵抗が強くなり弱いトルクしか発生できません。
ローコンプ(低圧縮)は低回転の圧縮抵抗が少ない為、強い低速トルクが発生します。
反面、高回転で、鋭いレスポンスは発生しません。
- ハーレーに求められるのは、低回転で高トルクのエンジン
- 低回転・高トルクエンジンは、ハイコンプでは得ることはできない
- ロングスロークエンジンを高回転化することは、ピストンスピードからみても不可能
古いV8マッスルカーが存在するアメリカなら、高いオクタン価のレースガスが町中で手に入ります。
レースガスならS&Sが作っている143ci(2,343CC)の圧縮比10.5 : 1で組み、高いパフォーマンスを発揮することが期待できます。
日本では手に入るガソリンのオクタン価が低く、成分や交通事情も異なるためパフォーマンスを発揮しないどころか危険でもあります。
このパフォーマンスを引き出すために、エンジンをガソリンに合わせる必要があります。これで初めてエンジンの魅力が現れます。
ガソリンのオクタン価にあった燃焼室へ変える。
オクタン価とガソリン成分にあった燃焼室にして、シリンダーヘッドの吸気量を増やすと、排気量アップと同等以上のパフォーマンスが手に入ります。
手に入るガソリンのエネルギーを、最大限に取り出すには以下がポイント
- オクタン価に合った圧縮比にするために、燃焼室を広げる
- シリンダーヘッドで吸気量を増やし、燃焼効率をあげてパワーを得る
ローコンプ化させたうえで、吸気損失を減らせればエンジン出力は大幅にあがり、パフォーマンスアップに高い耐久性が手に入ります。
そのためには、3点がポイントとなります。
- ポート加工(吸気通路):燃焼室に吸気されるまでに、突起物や吸気通路の影響により発生するうずを減らし、損失が増えないようなポート(吸気通路)にする
- バルブシートカット:燃焼室へスムーズにすばやく吸気されやすい、バルブシートカットをほどこす
- 燃焼室の形状:吸気された混合気がスムーズにスワール(横渦)でシリンダー内に入り、キレイに燃焼しやすい燃焼室にする
まとめ
ここまで、ハーレーの圧縮比のメリット、デメリットについて解説いたしました。
以下に、ポイントをまとめています。
- 水冷エンジンと空冷エンジンの圧縮比は、同列に扱うことはできない
- 日本のオクタン価と成分、交通事情では、プレ・イグニッションが発生しやすい
- 高い圧縮比は、圧縮抵抗や圧縮中の熱で、エンストや低速トルクの低下、致命的なダメージを残すノッキングが起こる
- ハーレーに求められるのは、低回転で高トルクのエンジン
- 低回転、高トルクは、ハイコンプでは得ることはできない
- ローコンプ化と吸気損失を減らせれば、パワーアップに高い耐久性が手に入る
適正な圧縮比は、圧縮抵抗に負けない強い燃焼圧力が発生し、エンストさせようにもならないほど、粘りのある強い低速トルクが発生し、ノッキングリスクも減ります。
エンジン形式によって性能は決まらない?
- SV/Side Valve サイドバルブエンジン
- OHV/Over Head Valve オーバーヘッドバルブ
- SOHC/Single Over Herd Camshaft シングルオーバーカムシャフト
- DOHC/Double Over Head Camshaft ダブルオーバーヘッドカムシャフト
- Turbo Charger ターボチャージャー
- Super Charger スーパーチャージャー
- DI/Direct injection 直噴エンジン
SVは頑丈。
OHVは構造がシンプルで、耐久性が高くコンパクト。
SOHCはロッカーアームが不要でシングルカムのため、燃費も整備性も良い。
DOHCはカムが2つで高回転で高性能。
DIは燃焼効率が高い。
などなど。
いろんなエンジン形式がありますが、突き詰めると結局は燃焼室です。
ターボでもスーパーチャージャーでも。
- 燃焼室へ混合気を多くすばやく取り入れる
- 混合気を短時間で完全燃焼させる
エンジンの心臓部はシリンダーヘッドで、エンジンはガソリンによって働きます。
今日も、最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
ARIGATO BIKE
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