新型エンジンのインジェクションチューニングは、日本中のカスタムショップで行っていますが、実際にどのような方法で行っているのか?
また、エンジンマップを新規で制作する場合はどうしているのか?
一般的に行われているインジェクションチューニングは、すでにメーカーが用意してあるエンジンマップを選択、またはダウンロードして、そのデータをもとにシャシダイに乗せて、個体差をなくすチューニング方法です。
この方法はベースがあるため、プロチューナーがいなくても、経験豊富なメカニックがいればチューニングが可能です。
プロチューナーはまっさらの状態からエンジンマップの制作が可能です。
その場合は完成品のハーレーから解析を始め、完成までに1年ほどかけ作り上げます。プロチューナーは、アメリカのレース業界を含めても少ない存在です。
今回は新規から、エンジンマップを制作する方法を紹介します。
エンジンの引き出せる性能を見つけ出す
新しいエンジンを分解して、機械的な構造を理解し、どういった意図、設計思想で製作されたかを読み解き、引き出せる性能が何かを理解します。
例えば、
- 高回転で充填効率が高い4バルブを採用している
- 旧世代よりも軽量フライホイールを採用している
以上のことから、
- 低速トルクよりも、高回転で馬力を狙ったエンジン特性を持っている
分析した結果から情報を整理し、引き出せる性能、引き上げたい性能などが、実現可能かを検討する。
- 低速トルクを太くすることが可能であれば、旧世代エンジンのユーザーにも満足してもらえる
- 引き出せる性能はインジェクションチューニングで達成できるか?
- その性能はユーザーの求めと、ミスマッチしていないか?
- 引き出すための技術と設備があるか?
確認が終わったらシャシダイでベースマップを作り、公道を走行し、走行した結果から評価検証を行い、実現可能でさらに性能を伸ばせられるかを確認します。
この確認が出来たら、エンジンマップの詳細を詰めていきます。
乗り手の感じる鼓動感をどう数値化する?
事前に評価検証で得た情報をもとに、目指す方向性や達成したいベンチマークを何パターンか設定します。
例えば、
- 800~2,000回転付近の鼓動感を出し、それ以上の回転域ではパワー重視
- 全域でパワーをあげ最高出力はxx馬力以上
- 燃費重視
- 旧世代エンジンの魅力を受け継ぐ
などいくつかの方向性とベンチマークを設定します。設定段階で定まらない場合は仮説をもとに設定します。
設定ができれば実現性を確認する。
- 制作したエンジンマップは、個体差を許容できるか?
- ユーザーの要求に答えられるマップパターンをどれくらい持てるか?
- 制作したエンジンマップは、性能・味わい・耐久性が純正以上か?
- 1年を通して北海道から沖縄まで快適に走れるか?
アクセルをゆっくりと開けて1,500回転まではフィーリングが良く、そこからさらに開けていったときのフィーリングはどうなのか?
強くアクセルを開けた時のフィーリングはどうか?
強く開けたときと、ゆっくり開けた時の出力特性に違和感がないか?
こういったことをアクセル開度、回転数きざみで良い点を探し出していく。
その過程で問題が発生したら、新たに課題を設定してつぶしていきます。
エンジンマウント方式が変われば、当然チューニングも変わってきます。
リジッドマウントでは心地よくても、ラバーマウントだと物足りないこともあります。
ときには旧世代のエンジンに乗り、ワインディングや高速、町中を走ったりして、感覚を修正することも大事です。
鼓動感といったアナログを科学的に数値化していく。
数値化したデータを新しいユーザーだけではなく、旧世代のエンジンに魅力を感じているユーザーにも満足してもらえるように作り上げていく。
検証結果と各パーツのストレス具合を評価して、ベースマップを再度制作する。
良い点を見つけ出し、点を増やす作業を延々と繰り返し、点が線になればエンジンマップの完成です。
旧世代のエンジンマップの制作した実績があっても、新しいエンジンのエンジンマップを制作するには1年はかかります。
エンジンマップなどのソフトウェアは制作したら終わりではなく、むしろ、その後の運用のほうが大切です。
バージョンアップで機能追加や、性能、信頼性の向上などを行い、ユーザーにとって長い付き合いになるハーレーを、常に最新の技術で最適な状態にする。
万全なサポート体制も、ハーレー業界には求められています。
まとめ
販売されているバイクから、新規でエンジンマップを制作するには、とても根気のいる作業です。
特にベースマップが用意されていない場合や、レース用のエンジンマップを制作するのは、ハードの知識も必要で、エンジニアとのコミュニケーション能力も求められます。
チューナーという職種は、エンジニアでもメカニックとも異なる職種です。
シャシダイナモは実走行条件に近い状態にするのが役割ですが、実走行で初めて確認できる問題も多くあります。
こういった予測できなかった事がエンジンマップの精度に貢献し、環境対応能力のあるマップに繋がります。
そのためには日本中のショップやユーザーの協力があれば、より良い楽しさの提供が可能となります。
まだまだ、私達が知らないハーレーの魅力があると思っています。
その魅力を発見するには多くの実走行データが必要です。
今日も、最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
ARIGATO BIKE
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