エンジンオイルは、以下の3種類があげられます。
- 鉱物油:ベースオイルと構成添加剤のブレンド
- 部分合成油:鉱物油、化学合成ベースオイルと構成添加剤のブレンド
- 100%化学合成油:化学合成ベースオイルと構成添加剤のブレンド
エンジンオイルは、エンジン内の金属同士の摩擦を減らし、スムーズに動作させる潤滑作用が、一番大きな役割です。
金属をオイルでくるみ気密性を保ち、オイルの粘性を利用し燃焼ガスをクランク室に漏れることを防ぎます。また、金属粉やガスなどを綺麗にフィルターに運び出す洗浄という役割もあります。
空冷エンジンのハーレーでも、ある程度はオイルによる冷却作用もあります。
シリンダーヘッド内で燃焼した圧力は数トンになります。
オイルがなければ、ピストン・コンロッド・クランクシャフトに直接、衝撃が伝わるので、オイルの緩衝作用も極めて重要で、作用しなければエンジンは大きなダメージを受け続けます。
想像以上にオイルは大きな役割をになっています。
エンジンオイルの役割
エンジンオイルの役割は、以下の6項目があげられます。
- 潤滑作用:金属同士の接地面の摩擦軽減
- 防錆作用:金属のサビ防止
- 清浄作用:内部にスラッジ付着防止
- 冷却作用:様々な熱からオーバーヒートのトラブル防止
- 気密作用:燃焼時の圧力漏れ防止
- 緩衝作用:金属同士の衝撃の緩和
全ての役割をベースオイルの鉱物油のみでは、完全に対応できないため、5~30%の構成添加剤を追加して性能をあげます。
構成添加剤
構成添加剤はベースオイルの鉱物油のみでは対応できない部分を補います。この構成添加剤をベースオイルに混ぜて、エンジンオイルに求められている性能を果たすことが出来ます。
構成添加剤の種類として、代表的なものは以下になります。
- 粘度指数向上剤
- 摩擦調整剤
- 極圧剤
- 流動点降下剤
- 消泡剤
- 洗浄分散剤
- 防錆剤
- 酸化防止剤
一般的には上記の添加剤が5~30%入っています。
化学合成油(シンセティック)と、鉱物油(ミネラル)は、どちらがハーレーによいか?
ハーレーは通常使用でも、極めて過酷な状況にさらされるエンジンなので、エンジンの為に開発された化学合成油が、現行車・旧車ともにベストです。
以前は、化学合成油は浸透率が高いがゆえに、ガスケット、シールの素材に浸透し、オイルにじみ、漏れが発生したため浸透しづらい鉱物油が良いとされていました。
しかし現在のガスケット、シールは化学合成油対応がありますので、オイル漏れの心配はありません。
国産バイクと同じで、経年劣化によるにじみはあっても漏れはないです。
プロがオイル漏れを
「オイルが入っている証拠」
「こんなもんだよ」
「みんな漏れているよ」
と言っているのを、聞いたことがありますが、オイル漏れはすでに過去のことです。
オイル漏れはオイルが入っていない証拠です。
旧車乗りの方は、オーバーホールする際にヘッドの歪み取りをして、ぜひ化学合成油対応のメタル系のガスケットを使用して下さい。
メタル系のガスケットで吹き抜けを防止し、エンジンとしての強度も上がります。
化学合成油は、鉱物油に比べ不純物がほぼなく、エンジン(金属)の為だけに開発されたので、メリットしかないです。
特にハーレーはピストンのストロークが極端に長く、シリンダーに対するサイドフォースが強く、他のエンジンよりフリクションが大きい。
水冷エンジンのように、温度を一定に保てない空冷エンジンのハーレーこそ、化学合成油がぴったりです。
旧車は現行車以上にフリクションが大きいので、メリットが非常に高いです。
フリクションが低ければ、鼓動感が強くなり、調子の良い最高に気持ち良いハーレーになります。ぜひ大事に旧車を乗り続けてください。
*化学合成油対応のガスケット・シールの使用が前提
鉱物油のみ使用したエンジンの内部はまっくろです。ブローバイガス・スラッジが内部に付着した事が原因。
オイル劣化の原因は、ブローバイガスが一番大きなウエイトを占めている。暖機をせずに走るとブローバイガスは多くなる。
ブローバイガスの中に含まれる水や燃料がオイルの劣化速度に一番影響与えます。
暖機せずに走れてしまうインジェクション車両は注意が必要
化学合成油を使用したエンジンには付着しずらく、清浄作用も高いため、オイル交換時にまっくろなオイルが出ます。
※新車でも黒くなるのは添加剤の劣化の為です
エンジン内にスラッジが、こびりついていない証拠です。
オイル表示の読み方
エンジンオイルのパッケージには「0w−30」「10w−40」「15w−50」など表示されています。
「15w−50」の数字は粘度指数を表していますが、オイルの粘度を表しているわけではないです。
オイルの柔かい・固いの表記ではありません。
「15w−50」の15Wはエンジン始動時の外気温を表しており、温度で言うと-20℃を指しています。
-20℃までなら、オイルが固くならずにエンジンをかけられます。という意味です。
-20℃以下はオイルがエンジン内にスムーズに循環せずに、エンジンが焼き付く恐れがあります。
W:Winter(冬)の略で、数値が小さいほど、外気温に対して固くなりづらくなります。エンジンが始動し、暖機が完了すれば必要ない数値です。
低温粘度指数 | 0W | 5W | 10W | 15W | 20W |
外気温 | -35℃ | -30℃ | -25℃ | -20℃ | -15℃ |
暖機完了後は「15w−50」の50の数値をみます。
「15w−50」の50は暖機完了後に参考にする数値です。
50は通常走行・渋滞時・高回転の動粘度を表していて、数値が高いほど、高温時(100℃)にゆるくなりずらく、油膜を保てます。
油膜を保てるということは、ブローバイガスがクランクに抜けることを防ぎ、燃焼圧力・燃費向上・冷却作用が高まります。
ハーレーのような空冷エンジンは、ピストンとシリンダーのクリアランスが広いので、粘度指数が高いオイルが適しています。
高温粘度指数 | 20 | 30 | 40 | 50 | 60 |
cSt | 9.3 | 12.5 | 16.3 | 21.9 | 26.1 |
粘度指数の低温と高温の差が広いものはワイドレンジと呼び、とっても高価なグレードになり、温度による粘度変化が起こしにくい事を意味します。
レーサーなどは0W-50の超ワイドレンジを使用します。
逆に粘度指数の幅が狭いもの、例えば20w-30とかは、低い温度はドロドロで、高温時はシャバシャバしてるともいえます。しかし、エンジンにあっていれば問題は一切ありません。
まとめると「15Wー50」の
15Wは低温粘度指数: エンジン始動時の外気温の指標
50は高温粘度指数: エンジン高温時の油膜の保てる指標
15Wー50: この数値の幅が広いものが、温度による変化が少ない高性能オイル
基本的にオイルは、低温時には固くなり、高温時には柔らかくなります。
しかし、理想の粘度特性は、始動時に柔らかく、高温時には硬めです。
セルモーターの負担をなくすために、外気温が冷えていても始動時には柔らかく、高速走行時にしっかり油膜を保てる硬さが必要です。
オイルが本来もっている特徴の逆です。
そこで開発されたのが、ウインターグレードと、サマーグレードの2種類の特徴をもったマルチグレード、別名オールシーズンタイプです。
マルチグレードの誕生で、冬前・夏前にエンジンオイルを変える必要性がなくなりました。
コストは、鉱物油と比べ化学合成油は高い
一回の交換で6,000円前後も差があります。
しかし、長い目で見ればどうでしょうか。
仮に10年10万キロ乗るとしたら、12万円の差です(5,000kmで20回交換した場合)
ハーレーのカスタムパーツを考えれば、高すぎることはないと思います。
エンジンは修理を前提に設計されているので、鉱物油のみを使用し、10万キロでオーバーホールした際に、12万円分をボアアップ費用に回すのもありですが、年々パワーが落ちていくのは楽しくはないです。
走って走ってハーレーを楽しみましょう。
今日も、最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
ARIGATO BIKE
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