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ハーレーで高圧縮化したら高回転、高出力は可能なのか?

ハーレー ハイコンプ
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ハーレーはV型2気筒の大排気量空冷エンジンが一番の魅力です。

このエンジンの魅力にはまると「もっと高回転で迫力のある加速を味わいたい」と感じることがあります。

そして、高回転で馬力をあげるときの選択肢の一つが「ハイコンプにして馬力をあげる」です。

ディーラーでも高回転用ハイカムに、ハイコンプピストンを勧めたりもしていますし、高出力エンジンの圧縮比は高い。

ハーレーでハイコンプエンジンは可能か?
  • ハーレーで高回転用のハイカムに、ハイコンプピストンに変えれば、高回転・高出力エンジンになるのか?
  • 2気筒の空冷大排気量のロングストロークエンジンで可能なのか?

圧縮比によるエンジン性能の特徴

ハーレー ハイコンプ

同じトルクなら

・高圧縮(ハイコンプ)

メリット:高回転でのレスポンスが良く、するどい加速が可能
デメリット:低回転では高圧縮が抵抗になり、弱いトルクしか発生できない

・低圧縮(ローコンプ)

メリット:低回転の圧縮抵抗が少なく、強い低速トルクが発生する
デメリット:高回転で鋭いレスポンスはできない

一方を得れば他方を失う、トレードオフの関係




ハーレーの空冷エンジンでハイコンプ(高圧縮)にする危険性

ハーレー ハイコンプ

高出力エンジンや、空冷大排気量エンジンは高温高圧になりやすく、ガソリンが自己着火して起こるノッキングが発生しやすくなります。

そのため、耐ノック性の高いハイオクガソリンを使用します。

高出力の水冷エンジンは、エンジンの回りを水の壁でおおって、エンジン温度を一定に保てるため、ノッキングを制御することが可能です。

しかし走行風でしかエンジン温度を制御できない空冷エンジンでは、季節や道路事情によりエンジン温度を一定に保つことは極めて困難です。

空冷エンジンのノッキングの危険性は、水冷エンジンとは比較にならないほど持っているため、レース仕様やレースガスが使用できる場合を除いて、高温高圧になるハイコンプは、ノッキングのリスクを大幅に上げてしまいます。

しかも、ハーレーは1気筒あたり最大1000ccにせまる大きさのエンジンです。

水冷4気筒の1000ccは、1気筒あたり250ccです。

比べるまでもなくノッキングのリスクは遥かに高い。

ハーレー ブランチヘッド ローコンプ
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高回転・高出力エンジンはハイコンプに設定されている

ハーレー ハイコンプ

高温高圧に耐えられるエンジンは、1気筒あたり250cc前後の小排気量で、ショートストロークの水冷直列4気筒エンジンです。

世界最高峰のバイクエンジンに採用されています。

  • CBR1000RR
  • YZF-R1
  • GSX-R1000
  • ZX-10R

などのSSで圧縮比は驚異の13:1です。

高い圧縮比は取り出せる仕事量(熱効率)が大きい

55.1mmのショートストロークで13,000回転で200馬力を発揮する超高性能のエンジンです。

ノーマルで世界選手権に出場できる性能を持ち合わせています。

しかし、これだけ高性能なバイクでも、高圧縮の扱いにくさとノッキングを嫌っていたため、SC59(CBR1000RR)では12.3:1の圧縮比にしていました。

しかし、ライバルに負けない馬力を発揮させるために、SC77からライバルとおなじ13:1の高圧縮化してきました。

ハーレー ハイコンプ

それだけ高圧縮というのは扱いがシビアということです。




高圧縮エンジンとハーレーの空冷エンジンとの比較

車名エンジン種類1気筒あたりの排気量圧縮比ボア・ストローク
CBR1000RR直列4気筒 1,000cc250cc13.076.0mm・55.1mm
FLHTKSEV型2気筒 1,923cc962cc10.2103.5mm・114.3mm

※カタログスペック

ロングストロークとエンジン回転数の関係

・ピストンスピード

車名ピストン平均スピードストロークrpm
TC9620m/s111.13mm5500
CBR1000RR24m/s55.1mm13000

シンプルにTC96のストロークを10cm、CBR1000RRを5cmとする。

エンジンを1回転させるには、

  • TC96:ピストンが20cm移動する
  • CBR1000RR:ピストンが10cm移動する

同じ回転数なら、TC96は倍の距離を倍のスピードで移動することが必要

ゆったりと走るハーレーでも、ピストンスピードはSSにせまるスピードです。

しかもストロークは倍で、ピストンにかかる負担も当然大きく、サイドフォースも強くスカッフィングリスクも高い。

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エンジンの熱損失

ハーレー ハイコンプ

ボア・ストロークともに広く、大きい2気筒エンジンのハーレーは熱を逃がす壁が広いので、その面では、4気筒エンジンのよりメリットがあるように思えます。

しかし、燃焼室も巨大です。

異常加熱した燃焼室を冷やすのも走行風しかありません(M8では燃焼室のエキゾーストバルブの水冷・油冷機能を取り入れた)

ハーレーは、1気筒あたり最大1000ccにせまる、巨大な空冷エンジンです

対して水冷エンジンは4気筒の小排気量で、それぞれ冷やす壁も存在し、その壁に冷やすための冷却水が高温部分を循環しています。

走行風でしか冷やす事ができない巨大な2気筒エンジンで、圧縮比を上げて燃焼温度をあげれば、オイルの油膜切れやノッキング、オーバーヒートのリスクが大幅にあがります。

低回転向き高回転向き
圧縮比低圧縮(ローコンプ)高圧縮(ハイコンプ)
フライホイールヘビーライト
ストロークロングショート

ロングストークエンジン系の最高峰、Daytona Weapon IIのSuper XR-Rエンジンでもレースガスを使用して9,000回転が限界です。

ハーレー ローコンプ

以上のことから、ハイコンプ(高圧縮)で、高回転・高出力エンジンにするのは、機械的、熱的にも、極めて困難なことがわかります。

まとめ

高回転・高出力のハイコンプエンジンにするには、熱・ピストンスピードの課題をクリアすることが必要になります。

熱を制御できないロングストロークの、大排気量空冷エンジンでは極めて困難です。

  • 空冷大排気量エンジン:粘り強い低速トルクを発揮して、ドコッドコッとゆっくり力強く走るバイクに向いている
  • 水冷直列4気筒エンジン:高回転・高出力で異次元な性能を発揮するエンジンに向いている

エンジン形式によって引き出せる魅力や、楽しみかたは変わってきます。

 

今日も、最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

 

ARIGATO BIKE

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