- ハーレーはロングストロークって聞いているけど、ボアアップしたらショートストロークの特性に近づく?
- 883がハーレーの中で、一番のドコドコ感のあるエンジンなのか?
- そもそも、ロングストロークとショートストロークの違いがわからない
こういった疑問にお答えします。
結論からいうと、ハーレーはボアアップしてもロングストロークエンジンのままで、883はハーレーの中で一番のロングストロークエンジンです。
ロングストロークエンジン、ショートストロークエンジンは、シリンダーの内径とピストンが移動する行程の比率で決まります。
この比率でエンジンの特性が決まります。
ボアストローク比で客観的に特性をみる
ストロークをボアで割った値が、1よりも大きいのがロングストロークエンジンで、小さいのがショートストロークエンジンです。
シンプルにいうと、ストロークの値が、ボア径より大きければロングストロークエンジンです。
計算式:ストローク ÷ ボア = ボアストローク比
ショートストロークエンジン
- 1気筒 SR400:67.2 ÷ 87 = 0.8
- 2気筒 1299 パニガーレ:60.8 ÷ 116 = 0.5
- 4気筒 CBR1000RR-R:48.5 ÷ 81.0 = 0.6
ロングストロークエンジン
- 2気筒 IRON883:96.8 ÷ 76.2 = 1.3
- 2気筒 IRON1200:96.8 ÷ 88.9 = 1.1
- 2気筒 M8 CVO™ STREET GLIDE:114.3 ÷ 117.5 = 1.0
883は2割近く、ほかのハーレーよりもロングストロークです。
どうりで楽しいはずです。
数値でみると、なぜ883に人気があるのか客観的に分かります。
調べるとSRはショートストロークでした。
ストロークを伸ばせないオフロードエンジンがベースだとは聞いていましたが、ショートストロークだとは知りませんでした。
時代が求めたのはコンパクトで、高出力なショートストローク
マルチエンジン(一般的には4気筒)が誕生するまでは、ロングストロークは1度のストロークでたくさんの空気を吸い込むことができるので、ストローク量を伸ばしエンジン出力向上には必要でした。
しかし、バイクのロングストローク化には限界がありました。
- ストロークを伸ばせる物理的なスペースがない
- ストロークが伸びるほど、ピストンスピードがあがり、すでに限界に近づいていた
バイクは車のようにスペースに余裕がありません。
最高速を上げるためには回転数を上げる必要がありますが、ピストンスピードをあげると振動、熱損失などで限界点に達してしまいます。
そこで、気筒数を増やして、1気筒あたりの排気量を小さくするアイディアが採用されました。
しかし、同じ排気量で気筒数を増やすということは、1気筒あたりの吸い込む量は減り、フライホイールを回す力も弱まり、1気筒あたりのトルクは落ちることになります。
ですが、気筒数を増やすショートストローク化は、ピストンのストロークを短くできるため、同じ回転数ならロングストロークよりも、ピストンスピードを抑えられます。
ピストンのストロークが短ければ、振動は少なくなり高回転化もできる。軽量フライホイールを採用すればアクセルレスポンスの向上、熱損失も少ないエンジンになります。
ショートストローク、マルチエンジン化は単気筒、2気筒では考えられないほど、飛躍的に最高馬力と最高速を伸ばすことに成功しました。
バイクメーカーは性能・耐久性向上のために、マルチエンジンの開発にシフトしていきました。
世界の最先端のバイクメーカーが、水冷ショートストロークエンジンを開発をしている間に、当時は最先端のメーカーと認識されていたハーレーダビッドソン社は、だんだんと時代に取り残されたメーカーだと思われるようになっていきました。
現在もハーレーは空冷OHVという古い形式のエンジンを採用し続けています。
他のメーカーはバルブをカムで直接開閉するDOHCとエンジン形式を変えて、高回転・高出力に成功してましたが、ハーレーは排気量アップでしか、高出力に成功できていません。
他のメーカーから見れば、ハーレーから欲しい技術はないと思いますが、ハーレーには他のメーカーの、どのエンジンよりも、熱烈なファンが世界中にいるエンジンを持っています。
ロングストロークエンジンの特徴とメリット
ハーレーは現在最大で2,000cc近い排気量がラインナップされていて、1気筒あたり、およそ1,000ccで、1度の燃焼でピストンが移動するストロークは100mmを超えます。
エンジンは圧縮時の圧力に負けるとエンストします。
この圧力に負けないように、ピストンの下に重いおもりをつけて、簡単に止まらないようしています。
この重いおもりがフライホイールです。
フライホイールで鼓動感をあげるには、こちらのフライホイールで史上最高の鼓動感と低速トルクを手に入れる!を読んでみてください。
この重いフライホイールは慣性が働くので、軽量であれば、すぐ動きすぐ止まる。
重ければ動き出しは遅いが、動くと簡単にとまりません。
この特性を活かすと、強く粘りのある低速トルクを発生させることが出来ます。
ショートストローク、軽量フライホイールでは、この強い低速トルクを発生させることは不可能です。
もし、小排気量のショートストロークエンジンに、ハーレーの重いフライホイールをつけたら、燃焼圧力が弱くフライホイールを回すことができずにエンストを起こします。
この重いフライホイールがゴロンゴロン回るから、粘りのある強い低速トルクが発生し、鼓動感と言われる味わいも生みます。
低い回転数でゆったりと、坂道をゆうゆうと登れるのは、この重いフライホイールだからこそ出来る、超ロングストロークエンジンの最大のメリットです
フライホイールが軽量になるほど、高回転・高出力に適したエンジンになります。
ロングストロークエンジンに軽量フライホイールにすれば、低速トルクはなくなり、高回転でピストンを往復させたら、大きな熱と振動で耐久性が落ち、出力もあげられません。
ハーレーは同軸クランクで、2つのピストンが同じクランクピン・クランクシャフトを使用しています。
同じような2気筒エンジンの水平対向エンジン、直列エンジンはピストン1つに1つのクランクシャフトを使用しているために、重いフライホイールを使用しても鼓動感は生まれにくい構造になっています。
ボアアップすれば確実に馬力があがる
ピストン・シリンダー径を大きくしてボアアップする方法は、ハーレーに限らずメジャーな馬力アップ方法です。
ショートストロークは、燃焼ごとのピストンのストロークが短いため、回転する力は弱いが、短いぶんロスが少なく高回転・高出力に向いています。
ロングストロークは1度に大きく空気を吸い込むことができ、1度の燃焼圧力が強く、強い低速トルクを持つことが出来ます。
ハーレーはボアアップしたら、ショートストローク気味にはなりますが、あくまでも比率なので、ボアアップしてもストローク量は変わらないので、基準値の1を下回ることはありません。
ロングストロークエンジンのデメリット
- ピストンスピードがすでに限界点で、スピードを上げられない
- ピストンのフリクションが大きい
- 振動が増える
- 熱もロスも増えて耐久性に問題が出る
- 回転数を上げられず、馬力アップが難しい
- ボア径が広いため、デトネーションを起こしやすい
- アクセルレスポンスが悪い
ロングストローク化は、ある程度までは味わい深くなりますが、限界を超えることは物理的に不可能です。
時代に合わせたV-RODのレボリューションエンジン
V型2気筒エンジンなら、振動がある程度少ないのが60°で、排ガス規制をクリアして出力を上げられるのは、4バルブのDOHC水冷エンジンです。
それに対応したのがV-RODといえます。
ボアストローク比:72.0 ÷ 105.0 = 0.69(1よりも小さい為、ショートストロークエンジン)
V-RODはDOHCエンジンで、ヘッド部にカムを配置し、カムが直接バルブの開閉を行うので、高回転でも正確に開閉できる高回転・高出力エンジンです。
OHVはカム→プッシュロッド→ロッカーアームまで伝え、バルブを開閉させるので、高回転で正確に開閉させることは困難なうえ、パーツ点数も多く、重い。
4バルブ化は、小さいバルブを使用できるので、燃焼室の形状をシンプルにできます。
排ガス規制をクリアすることは、水冷で温度を一定に保てるので、排ガスもコントールできる。
空冷ハーレーとは異なる、時代に合わせたエンジンでしたが、V-RODの生産は終わりました。エンジンは生産しています。
2006年に登場したVRSCR(ストリートロッド)はバックステップ、倒立サスペンション、リアタイヤ180でバンク角もあり、ハーレー史上最高の性能を誇りました。
V-RODの登場は賛否両論ありましたが、あの豪快な加速は空冷だろうが水冷だろうが、大排気量の2気筒エンジンが、最高に気持ち良いということを証明してくれたV-RODは、歴史に残る偉大なバイクです。
世界中のファンを魅了するエンジンです。
まとめ
次世代を考え、ハーレーダビッドソン社は水冷エンジンのSTREET750、電動バイク、水冷スポーツスターS、ナイトスター、パンアメリカを発売しています。
次世代バイクの発売と発表はされましたが、ミルウォーキーエイトは伝統のロングストローク、空冷メインのエンジンで発売されました。
今までの魅力を、更に引き上げられる為に新しい技術を取り入れて、新しい時代のハーレーを、これからも世界中のバイカーが楽しめるように、今までどおり進化を止めないでほしいと思っています。
今日も、最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
ARIGATO BIKE
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